一外交官の見た明治維新(上)

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読書日記

2018年03月16日

『一外交官の見た明治維新』(上)  アーネスト・サトウ 岩波文庫 

今年は明治150年という。近々、天皇が譲位され、年号もかわるという。
幕末、開国の時代の事はおよそ理解していなかった私。私が育った頃の歴史の教科書にはあまりにもその時代の事象は複雑で簡単には整理できなかったのか、してはいけなかったのか、はたまた紙面がなかったのか、私の関心が乏しかったのか。すべてだったのかな。
ここにきて大いに関心が起きてきている。自由に読む時間が出来たというか、日本の以前の事の面白さを知り始めたというか。

余談だが、日本人は己の事をあまりよく知らないのではないか。歴史の教育が最たるもの。戦後、教えてはならないものが多々あった。民主化・自由化政策の下、日本の歴史や親孝行心、家族主義、勤勉のしつけ、などなど。
そして、今日では二宮尊徳像は歩きながらの読書で危険とばかりに学校から姿を消したという笑えぬ実情があるというが…。
ここに取り上げる『一外交官の見た明治維新』は、終戦前つまり1945年前の25年間はわが国では禁書として扱われていた。

さて、その予てより気がかりだったアーネスト・サトウという人の著書を手にしてみた。彼は、英国人で19歳かそこらでイギリス外交官、初めは通訳吏として来日。直ちに完璧に近く日本語を理解するようになる。と同時に、日本の実情を明確に把握していく。語学の才ある人は、それだけ真の情報力があるというものか。後に初代駐日英国大使となる。
サトウと言うが、この苗字はれっきとした英国名。ある民族の古くからある名である。

この著書はあくまでも外国人から見た日本感である。最強の外国人、英国人だ。その若き英国人が母親に送った当時の日本観察というか、手紙をもとに書かれている。
当時の日本は江戸時代末期。英国はと言えば、植民地政策で国策の東インド会社が大繁栄、中国にまで手を伸ばして、清王朝をアヘン戦争で壊滅させている。
憧れだった日本に来て、風雲急を告げる幕末・維新の政情の真っただ中に身を置いて、通訳が知る真のところを書いている。

われわれがわずかに教科書で習った記憶、幕末の日本と諸外国の通商条約締結における義憤の、あまりにも日本側のナイーブな危うさが悲しい。ともかく圧倒的に国際情報と科学的武力が足りないのだからしかたないが。
天皇と将軍の、日本人のこころにとってのよりどころ、政治にとってのよりどころの違いを、彼は明確に捉えている。
そして、明治維新を革命と捉えている。下級武士や浪人の。 

目の前で斬首検証をし、北斎の富岳百景が2シリングで買えたが自分の俸給は全て生活の必需品に消費された、とか、御殿山のイギリス公使館焼け打ち首謀者は、攘夷党の伊藤俊輔(後の博文)と井上肇らだとか、下関での連合艦隊と長州藩との戦いで、宍戸刑馬(後の高杉晋作)らが和睦交渉にきたとか、西郷らの話が生き生きと描写されている。

 

 

 

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